3Kとは、「きつい」「汚い」「危険」をローマ字表記した際の頭文字がKになることからそう表現されています。一般的に、3Kと表される職場は労働環境が厳しいというイメージがありますが、看護師の労働環境は、3Kにとどまらず、9Kとも言われてしまうことあります。
私は10年病棟看護師を続けてきて、2交代・3交代勤務を経験し、9Kと指摘されている内容を実感することにまあ言われてもしょうがないなと実感することになりました。
ただ、ブラックな9K(マイナス面)にばかり目が行きがちですが、しっかりと、ホワイトな9K(プラス面)もあることをお伝えします!ホワイトな9Kについては筆者の考えを含みます。
9Kについて一緒に見ていこう!
看護師ブラック9Kとは?(Kから始まるマイナス面)
世間で指摘されている、看護師のKから始まるマイナスポイントを9つご紹介します。
きつい
看護師の仕事は、体力的にも精神的にも大変な仕事だと言われています。
保険師助産師看護師法において、看護師の業務は「診療の補助」と「療養上の世話」の二つであるとされています。「診療の補助」は、医師の問診の準備やバイタルサイン測定、検査の準備、指示に基づく医療処置などを指します。「療養上の世話」は、食事や入浴介助、排泄介助や体位交換などを指します。とにかく業務の幅が広いことが特徴で、患者または利用者のあらゆる場面で看護師が関わります。
多忙であり、患者を抱きかかえるなど体を使う業務の中で、頭痛や肩こり、腰痛に悩まされる看護師は少なくありません。また、2交代・3交代勤務の職場に在籍する看護師は、不規則な生活を余儀なくされるため、常に眠気を感じたり、体調を崩しがちとなってしまうこともあります。
また、患者のあらゆる場面に関わる看護師ですが、小さなミスが大きな医療事故につながる可能性があるため、精神的な負担も大きいと言われています。気が抜けない場面が多く、インシデント・アクシデントにつながる可能性を常に意識して業務を行う必要があります。
汚い
看護師はオムツ交換、陰部洗浄、敵便、導尿、痰の吸引、ストマ管理、ドレーンの廃液処理など、世間から汚いと認識されているものに多く向き合わなければなりません。
特に患者も高齢化しており、認知症患者が増加している近年は、排泄処理をする機会が増えていると言われています。ベッド上やごみ箱など、トイレ以外のところで排泄をしてしまう患者や、排泄物に触れベッド柵などが汚物まみれになっているということも少なくありません。
危険
看護の仕事は危険がつきものです。看護業務の中では、空気感染、飛沫感染、接触感染、血液感染など様々な経路で感染症にかかるリスクがあります。対象が疾病を抱えた患者であるため、避けられないことです。
実際に、2019年の末頃からパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者の看護により感染してしまった看護師は多くいます。
また、患者の暴力や暴言、セクシャルハラスメントを受けるなどの危険もあります。アルコールの離脱症状や、認知面の低下、精神疾患など、患者の意図しない部分でやむを得ず起きてしまう部分もあります。
給料が安い
みなさんは看護師の給料についてどう思いますか?
一般に看護師の給料は高いというイメージが多く広まっているということも耳にしますが、実際に働いている看護師は「安い」と感じている人が多い傾向にあります。
厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は、498万6,200円でした(平均年齢41.2歳、勤続年数9.2年、月収34万4,300円、ボーナス85万4,600円)。年収は、夜勤手当や残業代など各種手当を含めたものです。
看護師が直面する、色々な身体的・精神的ストレスやリスクを考えると、「給料が見合わない」と感じてしまう看護師が多くなってしまう現実があります。
参考:令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
休憩が取れない
看護師の休暇は取りづらいと言われています。常に人手不足が叫ばれている業界であり、その人数の確保が難しい職場が多い状態です。「来月の休み希望は3日まで」など、制限を設けている職場も多く、有給消化も思い通りにできないことが多々あります。
休暇の取りにくい職場に勤めることになった場合、どうしても長期休暇を取りたかったり、はずせない用事がある時には、できるだけ早めに上司に相談することが必要です。
結婚が遅くなる
厚生労働省の「年齢別未婚率・有配偶率(2017年)」によると、看護職と一般職の有配偶率は差があります。
20代女性の有配偶者率は、一般職:20.4%に対し、看護師:14.3%。
30代女性の有配偶者率は、一般職:67.6%に対し、看護師:52.7%。
40代女性の有配偶者率は、一般職:79.0%に対し、看護師:71.6%。
50代女性の有配偶者率は、一般職:80.1%に対し、看護師:78.6% となっています。
すべての年代で看護師のほうが、一般職と比較して有配偶者率は低いということがわかりますが、特に30代で顕著でなことがわかります。
これは、看護師としてのキャリアアップのための勉強を優先することなどが理由として挙げられます。看護師になってから、認定看護師や専門看護師、保険師や助産師を目指す人もいます。特に30代の看護師というのは、知識や経験を積み重ねてきた自信や体力もあり、精力的に働くことができ、職場でも重要な立場につくようになり始める年代です。また、要因の一つとして、看護師が職場によっては不規則勤務であり、人と出会う機会が得られにくいことなども挙げられます。
さらに、安定した収入を得ることができるということも、将来への不安感軽減につながり、結婚を焦らない理由の一つになっていると考えられます。
参考:2017年看護職員実態調査、92.pdf (nurse.or.jp)
化粧のりが悪くなる
日々の体力的・精神的なストレスや、
規則が厳しい
看護の現場では、医療職という信頼を得ることが大切な職種ということや、人手不足の現状から、や規則に厳しい部分もあります。身だしなみの制限から、休日の勉強会参加の強制、有給休暇が自由に取れないなど、様々です。
規則が厳しく、それがストレスに感じるという場合、長く続けていくためには自由度が高い職場に勤めることを選択した方が良い場合もあります。
薬に頼って生きている
看護師の仕事は、肉体的にも精神的にもハード!無理をせざるを得ない環境も多く、体は様々な不調を来たしがちです。不調があっても気軽に休むことはできないため、薬に頼らざるを得ない状況です。
看護師の職業病として、腰痛や頭痛、不眠、自立神経失調症、燃え尽き症候群などが多いとされています。実際、筆者の職場でも、出勤スタッフ全員が万全の体調であったことは少なかったように感じま
看護師ホワイト9Kとは?(Kから始まるプラス面)
看護師のKから始まるプラスポイントを9つ、ご紹介します。
感謝される
看護の仕事をしていると、何度も何度も、感謝されます。患者さんのみならず、他の医療スタッフとの間でも感謝の言葉が飛び交います。清潔ケア・搬送・移乗動作時など労力が必要で、他スタッフと協力して実施する場面も多いためです。「ありがとうと言われる職業ランキング」があったら確実に上位に食い込んでいく職種だと思われます。心からの感謝の言葉は、遣り甲斐につながります。
関心を持てる、観察力が向上する
看護師の仕事を経験していくと、他者や周りの環境に関心が持てるようになり、観察力も磨かれます。仕事の中で、患者さんの様々な事柄を気にかけ、対応していくため、常にアンテナを立てて変化に機敏に反応できるような能力が養われます。
このアンテナ力は、仕事に限らず、普段の家事・子育て・親の介護・地域の人との関わりなどの日常生活の中でも覆いに役立つ力であると筆者は考えます。
コミュニケーションスキルの向上
看護師の仕事をする上で、コミュニケーションスキルの向上はとても重要なポイントになります。(コミュニケーションは英語表記で「C」からはじまりますが、ここではローマ字表記として採用させていただいています。)コミュニケーション能力を高めることで、日々の情報収集や患者さんとの信頼関係の構築、他スタッフとの円滑な連携に繋がるなど様々なメリットがあります。
コミュニケーションスキルとは、相手との情報共有や、意思疎通をスムーズに行うための能力や技術のことを指します。コミュニケーションスキルは「言語的コミュニケーション」と、「非言語的コミュニケーション」にわけられます。看護師として働いていると、日々人と関わっていく中で、言葉のかけ方、声の抑揚、表情、目線、声色、触れ合いなど様々なコミュニケーションスキルを駆使できるようになります。
大幅にコミュニケーションスキルアップを狙える看護師ですが、特に、疾病を抱え調子が悪い患者さんと向き合う看護師は、「非言語的コミュニケーション」の「読み解く力」が、大きく備わるように感じます。患者さんの言葉にはならない色々な情報から、患者さんの気持ちを察することができる看護師には、患者さんも信頼し、安心して治療に臨むことができるでしょう。
新人時代、「私コミュ障なんだよね・・・」と嘆く看護師も、働き始めれば、自然と磨かれていきます。そして、プライベートや今後の人生においても、コミュニケーションスキルは十分に生かすことができるポイントになります。
雇用の安定
2020年代になり、世間では終身雇用制度が崩壊していく、との話を良く耳にします。看護師は国家資格を持っている限り、職を失う心配はほぼありません。
今後、世の中の仕事は次々とAI(Artificial Intelligence:人工知能)・ロボットに奪われていくと言う話を耳にしますが、皆さんは看護の仕事はAIに奪われると思いますか?
野村総合研究所は、2015年に「日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどで代替可能となる」との予測を発表しました。601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算してしますが、医師や保険師、理学療法士なども含め医療関係職は「人口知能やロボットなどによる代替の可能性は低い」と部類に入っています。報告書によると、「創造性・協調性が必要な業務や、非定型な業務は、将来においても人が担う」と記されています。看護師は、患者の個別な特性を理解し、その時々で優先順位を考えながら臨機応変な対応が求められる職業ですし、信頼関係の構築も必要な職業です。AI・ロボットが次々と導入されていく未来においても、看護の仕事をロボットが代行するというのは現時点では考えにくいでしょう。
参考)野村研究所、2007年4月17日 (nri.com)
結婚したい女性職業ナンバーワン
看護師は、男性が結婚したい女性の職業ランキングで、ナンバーワンの常連となっています。優しく患者に接してケアを行う「白衣の天使」というイメージが強く、テキパキと働き者の印象もあり、理想のお嫁さん像として人気に繋がっています。国家資格を持ち、収入が補償されていることなども、パートナーを選ぶ際には魅力的に感じる要因の一つです。
子どもがいても働きやすい
厚生労働省によると、2018年時点で看護師の男女別の構成割合は、男性看護師が7.8%、女性看護師が92.8%となっています。ナースマンが増えて来たとはいえ、まだまだ女性メインの職種です。職場には自分と同様に出産・育児を経験してきたママナースがたくさんおり、子どもが発熱し急にお休みをいただくという場面でも、理解してもらいやすい傾向にあります。
また、「院内保育」という形で、病院や施設の中に職員のための保育園が併設されている場所もあります。そこを利用することで、出勤しがてら子どもを預けることができます。同じ建物の中に我が子がいるという安心感にもつながります。忙しい中ですが、小さい子どもを持つスタッフへのフォロー体制は期待しても良いポイントです。
もちろん、「しばらく育児に専念したい」「子どもが小さいうちは夜勤ができないから」という形で、看護の現場を離れる人もいます。そのような場合でも、子どもがある程度大きくなった時に、再就職しやすいというメリットは大きいのではないでしょうか。
化粧が適当でもOK
化粧ノリが良いとか、悪いとかではなく、それ以前に化粧なんて適当で良いのです。ナチュラルメイクを好まれる医療現場ですので、時間をかけて行う必要はありません。清潔さや安心感を与えられれば、大丈夫です。看護師として大切なのは化粧の上手さよりも、笑顔や親しみやすさです。
さらに、2020年からのコロナ禍以降は、マスク着用が義務付けられている医療機関がほとんどですので、顔は隠れてしまいます。化粧がとにかく面倒に感じる人にとっては、嬉しい職場環境ではないでしょうか。しかしながら、マスクをしていると表情の認識が難しくなってしまうので、相手に意図しない印象を与えないように配慮が必要です。
感動できる
看護師として勤務していると、いくつもの感動的なヒューマンドラマを体験することができます。「医者は病気を診る、看護師はその人を看る」と言う言葉があります。全人的に患者さんをとらえようとする看護師は、患者さんの疾病の他、生活習慣や、家族関係や、仕事、居住環境、性格、思想など、多くの情報を得ます。また、日々の療養上の世話や、診療の補助を通じて、患者さんと一番関わる機会が多いのも看護師です。
治療を乗り越え、患者さんの病状が改善し元気になった時の笑顔・・・
終末期を迎え日々老衰し、最後までご家族が見守る中で命の火が消えた時のご家族の涙・・・
つらい出産を乗り越え赤ちゃんを取り上げた時のふり絞るような産声・・・
看護師の現場は様々な感情、感動で溢れています。
貢献できる
医療従事者は、社会貢献度が高い職業の代表例として、よく取り上げられます。
社会貢献とは個人や企業、団体が社会を良くしていくための行動を指します。社会貢献といってもその内容は様々で、社会的な問題解決も目的に含めるソーシャルビジネス、再生エネルギーの開発と選択、フェアトレード商品の販売・購入、清掃や保護猫活動などのボランティア活動、など多方面から参画することができます。
また、社会貢献とは、直接的な社会貢献と、間接的な社会貢献に分けることができます。直接的な社会貢献とは、救済事業やボランティア活動など、社会貢献を初めから目的とした事業や行為を指します。医療職である看護師は、まさにこの「直接的社会貢献」ができる職業です。
医療とは、人間の健康の維持、回復、促進などを目的とした諸活動についてを指します。看護師はその中で、患者さんの療養上の世話と診療の補助を担当します。看護師業務ができるのは、看護師国家資格を持った看護師だけです。看護師として日々出勤することが、社会貢献につながるのです。
筆者は、10年間経験を通じて、看護の仕事は「自分の徳を高めてお金もいただける、ありがたいお仕事」と捉え、誇らしくも思っています。
最後に
「看護師は大変な仕事」という事が世間的な認識で、看護師自身もそう思っています。
確かに9Kと言われる、大変に感じる部分は多々あります。しかし、もちろんマイナス面だけの看護師ではありません。それ以上に、自分を成長させてくれる、豊かにしてくれる輝かしいホワイトな9Kも存在しています。
日々の仕事の中では、ただ業務に追われがちですが、看護師という職を様々な面から見ていきたいものです。看護師の職を選択した自分を肯定しながら働くことができたら、とても幸せなことです。
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